「新しい顔」「欧州」──。
フランス大統領選の第1回投票(4月23日)で24.01%のトップ得票率を獲得し、決戦投票(5月7日)に進んだ無党派グループ「前進!」のリーダー、エマニュエル・マクロン氏(39)が“勝利宣言”で何度も繰り返したのがこの2つの言葉だ。
これらの言葉こそ、今回の大統領選を特徴づけたキーワードと言える。
まず「新しい顔」は、まさにマクロン氏を言い表している。ちょうど1年前にマクロン氏が右派でも左派でも政党でもない中道政治グループ「前進!」を創設した時、国民の大半は彼が「大国」フランスの大統領の座を至近距離で狙うことになるとは予想しなかった。なにしろマクロン氏は、議員経験がなく、閣僚経験がたった2年(2014年8月から2016年8月まで経済相)のシロウト政治家だったのだ。
その点、ドナルド・トランプ米大統領と似ていなくもない。ただし、トランプ大統領が「大金持ちの有名人」だったのに対し、マクロン氏は経済相に就任する前は一部政財界人以外にはまったく名前を知られていなかった。経済界に多少名が知られていたのは、ロッシルド(英語読みはロスチャイルド)商業銀行のナンバー2として企業間の大型買収問題で辣腕をふるっていたからだ。
高まる「反システム」の空気
マクロン氏はなぜトップの支持率を得ることができたのか。最大の理由は、約20年間続いた右派と左派の2大政党政治にフランス国民が異議を申し立てたから、ということになるだろう。つまり、国民の間で高まってきた「反既成システム」の空気がマクロン氏を勝たせたというわけだ。