連載第7回「大躍進する中国、投融資額では世界を圧倒」の中で紹介した、欧米を中心とした先進国がコア技術を提供し、中国が製造する国際協業モデル(図24:クリーンエネルギー産業の国際協業モデル)も、このグローバル・オープン・イノベーションの1つの例です。

 お互いの強みを補完し合うオープンイノベーションの考えをさらに一歩すすめたラディカルコラボレーション(Radical Collaboration)というコンセプトがあります。

ライバルと手を組む「ラディカルコラボレーション」

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半導体ではラディカルイノベーションが常識に〔AFPBB News

 日本語に直訳すると「過激な協業」となるのでしょうが、何が“過激”かと言うと、協業するパートナーがライバル企業なのです。

 このラディカルコラボレーションの有名な例が、半導体産業です。新しい半導体製品の開発には何千億円におよぶ研究開発および製造設備への投資が必要であり、1社でこの規模のリスクを負える企業の数は限られます。

 そこで例えばIBMは、高性能・低消費電力チップ開発のため、東芝、NEC、サムスン電子など競合相手と手を組み、次世代半導体プロセス技術の基礎研究プログラムを立ち上げました。

 最終製品のチップの販売では競争するものの、技術開発の領域では、ラディカルコラボレーションによって次世代製品開発にかかる莫大な資金をシェアし、お互いのリスクの低減を試みています。

 化石燃料との価格競争に打ち勝つためには“過激”なイノベーションが必要なクリーンエネルギー産業こそ、このラディカルコラボレーションのような技術開発手法を積極的に取り入れるべきではないでしょうか?

 先ほどの先進国がコア技術を提供し、中国が製造する国際協業モデルに代表される現状のクリーンエネルギー産業のオープンイノベーションに話を戻しましょう。

 中国は、この国際協業モデルを運用させることによって、欧米の先端技術を学び、最終的には自国でイノベーション技術を開発する戦略を持っていることは、連載第8回「次世代の覇権目指し、手を握る米国と中国」の中で紹介した通りです。

 つまり、グローバルベースで展開されるオープンイノベーションは、それに参加するすべての国にイノベーションを起こさせるチャンスを与えるのです。