安倍晋三総理は12月26、27日にハワイでオバマ大統領と会談する。その際に真珠湾を訪問する予定である。安倍総理はバラク・オバマ大統領との緊密な信頼関係を土台に、多くの歴史的事業を成し遂げ、極めて良好な日米関係を構築した。
日本の首相として初めての上下両院合同会議でのスピーチ実現、日米防衛協力枠組みの見直し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への協力、オバマ大統領の仲介による日韓関係の改善などが主なものだ。
中でも多くの日本人にとって最も印象的だったのはオバマ大統領の広島訪問の実現であろう。
それに対する返礼の意味も込めて、オバマ大統領の任期の最後に真珠湾を訪問し、ともに世界平和を祈念するというのは2人の首脳にとってふさわしい締めくくりであり、両国国民の記憶に長く残る歴史の1ページとなるであろう。
1.歴史に学ぶ情報収集能力の重要性
現在の日米関係は日本が米国と戦争したことが信じられないほど良好かつ緊密であり、外交・安保に加え、経済、文化、スポーツなど様々な領域において国民各層の間で太い絆が結ばれている。
その米国との間で1941年に太平洋戦争を始めた大きな要因となったのは1937年以降の日中戦争である。
当時、日本国内には日中戦争拡大論と不拡大論の間で意見対立が存在していた。最終的に拡大論を抑えることができず、日中戦争が始まった。
その論争において、拡大論を支持する人々の間には中国のナショナリズムの強さ、中国共産党の革命戦略、中国の経済社会構造などに関する認識不足があったと言われている。
日本はそうした誤った認識に基づいて不用意な戦略を展開したため、日中戦争が泥沼化し、そこに様々な要因が加わって、米国との戦争を始め、そして無条件降伏を受け入れるという結果に陥ったのである。
こうした結果を招いた要因は国内の政治・経済・社会・軍組織内部などの事情を含めて様々であるが、事態を深刻化させた主な要因の1つは日本の国際情勢に対する情報収集・分析能力の低さである。
きちんとした情報収集活動も行わず、自分にとって都合のいいシナリオが実現するとの安易な予測に基づいて、ワーストケースのシナリオに対する準備もなく軍事行動を展開した。
このため、その一線を越えると最悪の事態に向かうリスクがあることを十分認識せず、相手の挑発に乗って不用意な強硬策を繰り返し、泥沼の深みへとはまっていった。これは日中戦争のみならず、米国との太平洋戦争でも同様の傾向が見られたのは広く知られている。