(文:春名 幹男)
大統領官邸を舞台にした「情報漏洩」と公私混同の「側近政治」――。朴槿恵韓国大統領はついに任期中の辞任を表明した。トランプ米次期大統領(70)は来年1月20日に就任するが、もっとスケールの大きい、国際的規模の問題を抱えていて、議論になっていることが分かった。
問題に絡んでいるのは、次期大統領と、長男ドナルド・ジュニア(38)、次男エリック(32)、長女イバンカ(35)とその夫ジャレド・クシュナー(35)の各氏。息子ら4人を含めて、大統領がビジネスと政治を混同する危険性である。
4人は政権移行チームの執行委員も務めており、高官人事などをめぐって機密情報を提供してほしい、とオバマ政権に要求しているもようだ。
特にクシュナー氏は次期大統領とともに国家情報長官オフィスによる「大統領日報(PDB)」の報告を聞きたいと申し入れている。しかし問題は、彼が最高機密である「トップシークレット」のセキュリティクリアランス(機密情報取り扱い資格)を持っていないことだ。
「ブラインド・トラスト」を拒否
米国では近年、大統領は就任前に自分の資産を売却するか、「ブラインド・トラスト」に委ねることが恒例化している。ブラインド・トラストとは、公職にある個人の株式、不動産などを、職権乱用を防ぐために白紙委任すること。第三者の受託機関に資産管理を委せる信託方式である。第三者が管理している間、資産売却などの取引が全くできなくなる。例えば、大統領自身の意図的発言で保有株の株価が上昇しても、利益を得ることはできない。
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