11月、フィリピン大学マニラ校公衆衛生教室の教授と打ち合わせのためフィリピンを訪問した。5月に次いで2回目だ。
東京から4時間のフライトでニノイ・アキノ国際空港に到着。マニラ市内に向かうタクシーに乗って目につくのは建設中のビルや工事現場の多さ。最近成長に陰りが見える東南アジアの国々の中にあって、フィリピンが順調に経済成長を遂げている様子が分かる。
経済成長率6%というのはこういうことのなのか――。高度成長を経験したことのない目には新鮮に映った。
フィリピンでは医療従事者や公衆衛生分野の研究者と密に交流した。その中でまず驚いたのが、彼らの待遇の悪さだ。現地の友人は、「専門分野や経験年数にもよるが、看護師で月4万円、研修医で月6万円、比較的待遇の良い外科医でも20万円が一般的」と言う。
給料の半分が住宅費
しかし家賃は高い。一人暮らしのアパートの家賃は1万5000円から2万円。この8年間で2倍に跳ね上がったという。成長を先取りして不動産投機も起きているようだ。マニラの看護師は給料の約半分を家賃に割かなければならなくなった。
この結果、国外脱出を図る看護師が少なくない。
実は、フィリピンの看護師は、かなり前から米国や中東に「出稼ぎ」に行っている。かつて米国の植民地だったフィリピンは英語が公用語でもあり言葉の障壁が低いせいもあるが、とにかく国内では身につけた技量に比べ報酬が低すぎるのだ。
海外では、医師免許と比較して看護師免許の方が就職・待遇が良いケースもある。そのため、医師免許を持ちながらも海外では看護師として働いている人もいる。
フィリピン人看護師は勤勉だ。医学生である友人の日常生活の実態を知って驚いた。平日は朝5時半に起床。7時から19時まで大学で授業を受けて帰宅。その後1時間ほど昼寝をして夜2時に就寝するまで勉強するという。
フィリピンの医学部は米国の制度をお手本に作られており、4年制大学を卒業後にメディカルスクールに進学する。ここで4年生になれば臨床実習が始まり3日に1度は昼間から翌朝まで働く生活を送る。