20年前、外科医研修は脱走したくなるほど苛酷だった(写真はイメージ)

 10月14日、電通の新入社員だった女性、高橋まつりさんの自殺が労災認定されたことを受けて、東京労働局は電通本社・支社に対して今までにない規模で臨検監督を実施しました。

 そして10月17日、電通の石井直社長は「時間外労働月45時間以内」「22時の全館消灯」「仕事に関係する自己啓発・情報収集なども勤務登録」などの対策を打ち出したとのことです。

 他に何も考える余裕が与えられないほどの加重労働は是正されてしかるべきですが、この事件は、20を超えるクローバル企業で産業医を務める武神健之先生が述べているように、そして一般の方も多く感じているように、過重労働だけではなく、精神的ストレス(パワーハラスメントが疑われる)が加わった複合要因により起こったと思われます(参照:「現役産業医が見た電通事件、3つの問題点――『残業100時間超えだけが問題ではない』」)。

 今だから言えるのですが、私自身、20年前の外科研修医時代に2回ほど荷物をまとめて逃げ出そうとしたことがあります。

 3カ月(または6カ月)と期間が決まっている研修ですら、全てのキャリアを失っても良いと思えるくらいに追いつめられていたのです。ましてや誰もが羨む一流企業に正社員として入社し、簡単には逃げられない状況にあった新入社員の高橋さんの心境は、察するに余りあるものがあります。