ウォール街の手助けで生き延びた米シェール企業だが、財務状況は相変わらず逼迫している(写真はイメージ)

「OPECの減産に加わる用意がある」──こう述べたのはトルコのイスタンブールで開催された「世界エネルギー会議」に招かれ、10月10日に講演したプーチン大統領である。

 ロシアのOPEC減産への協力に懐疑的だった市場関係者にとって、プーチン大統領の発言はサプライズだった。この背景には、シリアへの軍事介入が長引きロシアの財政状況がかなり悪化していることがある。

 また、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相も「11月のOPEC総会で世界的な供給制限が合意される可能性がある」として「原油価格が年内に1バレル=60ドルに達するのは考えられないことではない」との見通しを示した。

 ロボトレード(人工知能による売買。原油先物市場のキープレイヤーとなっている)がニュースのヘッドライン(プーチン大統領の減産発言など)に大きく反応したことから、米WTI原油先物市場は1バレル=51ドルを超え、2015年7月以来約1年3カ月ぶりの高値となった。財政面で苦境に陥る2大産油国の協調行動がとりあえず功を奏した結果と言えよう。

リグ稼働数は増えたが原油生産量は低下

 だが、専門家は原油価格の今後の見通しを楽観していない。

 ゴールドマンサックスは「上昇している原油相場は1バレル=55ドルで頭打ちになる」との見解を示している(10月6日付ブルームバーグ)。その理由は、原油価格が上昇すると米国のシェール企業が操業を再開し、過去10年で実施された投資に伴う供給が「壁」となると見ているからだ。

 米石油サービス会社ベーカーヒューズが10月7日に公表したデータによれば、米国における石油掘削リグ稼働数は前週比3基増の428基と2月以来の高水準となった。5月下旬の316基をボトムに6月上旬から始まった増加は15週連続となり、2011年の19週と2010年の17週に次ぐ3番目の長さ(1987年以来)である。