掃除の方法には2つのタイプがある

 オートファジーはこんなふうに起きます。まず細胞の一角に、「オートファゴソーム」と呼ばれる小さな袋が生じ、タンパク質などを包み込みます。この袋は次に、「リソソーム」という別の小胞と合体します。リソソームはタンパク質などの分解酵素を含んでいるため、オートファゴソームに取り込まれた中身はすべて、バラバラに壊れるのです(図)。

細胞内で起こるオートファジーの仕組み。(ノーベル財団プレスリリースを参考に作成)
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(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48055)

 オートファジーは、タンパク質分子よりもっと大きな成分、例えばミトコンドリアのような細胞内の小器官も分解します。このときは、オートファゴソームの中にミトコンドリアが丸ごと取り込まれている様子が、顕微鏡で観察できます。取り込んだものは何でも壊す、ダイナミックなお掃除システムなのです。

 近年の研究で、オートファジーには、ランダムに起きるタイプと、古くなったターゲットを狙って壊すタイプがあることがわかってきました。

 前者は、たまたま膜の中に入ったものを、古いものも新しいものもまとめて壊すやり方で、例えて言うなら温泉の「源泉掛け流し方式」です。掛け流しの湯船は、お湯の供給量と同じ量を常に排水していますね。そうやって中身を常時入れ替えることで、湯船の中がきれいに保たれます。単純な割になかなか有効な方法といえるでしょう。

 後者は、不良化したミトコンドリアなどに特別のマーキングをして識別し、オートファジーへ取り込む方式。温泉の例で言うなら、湯船に浮かぶゴミを直接すくい上げるやり方といえます。効率は高いですが、それだけ複雑なシステムが必要になります。この2つのタイプを併用して、細胞内の鮮度を保っているわけです。

リサイクルされるアミノ酸量は、食べる量より多い

 人体の中では、毎日200グラム弱ほどのタンパク質が分解されています。この半分程度、1日100グラムぐらいが、オートファジーによる分解と見積もられています。

 タンパク質は、アミノ酸という小さな分子が数十個から、ときに数千個も連なって作られる、巨大な分子。オートファジーは、これを元のアミノ酸へバラします。そしてバラバラになったアミノ酸は、新たなタンパク質合成の材料として使われる。つまりオートファジーはゴミ掃除であると同時に、体内の「リサイクルシステム」でもあります。