──それはどういったものなのでしょうか。
稲垣 「うすき石仏ねっと」というシステムを構築し、地域住民の医療状況や生活状況をネット上で共有できるようにしました。病院や歯科医院などの医療機関から、介護施設や消防署、さらには調剤薬局などまでが、住民の個人データを共有します。「石仏カード」を提示すると、対象住民の情報を見られるようになっています。
──個人情報の連携では、セキュリティの管理もポイントとなりそうですが・・・。
稲垣 その通りです。ですので、インターネットではなく、地元ケーブルテレビの地域イントラネットを使用することで、情報の流出を防いでいます。また、津波の届かない安全な場所にサーバーを置くことで、データの消失を防いでいます。
また、かかりつけ医の医師と住民の信頼関係で着実に登録者を伸ばし、今年に入って1万人に到達しました。市民の4分の1が参加するこうしたネットワークは、全国でも類を見ないと思います。ただし、あくまでも住民の同意が必須の取り組みであり、今後、若い世代に参加を呼び掛けていくことなどが課題です。
──あくまで住民の同意や登録がないと、システムは成熟しないということですね。
稲垣 そこが課題ともいえます。
いかに住民を巻き込んで連携できるか
──ここまでに出た臼杵市の施策は、医療や福祉の関係者同士が連携したネットワークといえます。その連携を広げて、住民や地域を巻き込むのは難しいのでしょうか。
稲垣 連携を住民にまで広げることは非常に重要で、臼杵市はその点でも先進的な取り組みを行っています。たとえば、認知症対策を通じた地域連携。認知症サポーター養成講座を開き、認知症になった人を支えるノウハウなどを住民に学んでもらったり、講演会をやったりしています。