「それでも地球は回っている」

 ガリレオの言葉でも有名な地動説。今では誰もが太陽の周りを地球が回っていると知っている。しかし地動説以前は、太陽が地球の周りを回っているという天動説の方が主流だった。

 この天動説が、どのようにして地動説にとって変わられたのか、その理由をご存知だろうか? それは世代交代によってなされたのだと、「パラダイムシフト」という言葉を生み出したトーマス・クーンは主張する。

 天動説派と地動説派は、議論してもお互い噛み合わなかった。しかし、若い研究者の多くが地動説派となり、天動説派の研究者がどんどん高齢になり亡くなっていったことで、地動説が確固たる地位を築くに至ったのだ、と。

 これは、根本的に価値観が異なる者同士は、議論や話し合いによっては分かり合えず、世代交代によってしか大きな価値観の転換は起こらない、ということを示している。

 これ自体は正しいと僕は感じる。しかし現代は、少し状況が違う。なぜなら、「大きな価値観の転換」が、以前よりもはるかに早いスピードで起こっているからだ。携帯電話が登場してからiPhoneが登場するまでどれぐらい時間がかかったか。インターネットが登場してから世界を一変させるまでどれぐらい時間がかかったか。

 僕らは、天動説を捨てなかった研究者のような生き方はできない。僕らは、自分の今の感覚では受け入れがたい新たな価値観を、無理矢理にでも取り込んでいく努力をしなくてはならない時代に生きている。そうしなければ、時代に取り残されてしまうのだ。そのスピードは、今後ますます加速していくことだろう。

 そんな時代に僕らはどんな風に生きていくべきか。新しい価値観と対峙する方法を学べる3冊を紹介しようと思う。

現代ではなく“未来”に適応する力

これからの世界をつくる仲間たちへ』(落合陽一著、小学館)

『これからの世界をつくる仲間たちへ』落合陽一著、小学館、税別1300円

 本書は、コンピュータが人類を支配する未来を前提として描かれている。「現代の魔術師」と評され、テクノロジーと魔法の区別がつかなくなる未来を先取りして提示して見せている著者にとっては、その未来は当然やってくるものだ。僕も、僕が生きている間に、人工知能が飛躍的な進化を遂げ、SF映画で描かれるような、人工知能と人類が何らかの形で共存するような社会がやってくると信じている。

 そういう未来にあって、コンピュータに使われるのではない「クリエイティブクラス」を目指すために今何をすべきかを提示するのが本書だ。今現在の価値観に従ってキャリアや能力開発をしても、ほんの少しすればそれらが役に立たなくなる未来がやってくる。