フランスで相次ぐイスラム女性用の水着禁止に波紋

チュニジアのビゼルト近郊の海辺で、イスラム教徒の女性向けの水着「ブルキニ」を着て海水浴をする女性(中央、2016年8月16日撮影)。(c)AFP/FETHI BELAID〔AFPBB News

 この夏、イスラム教徒の女性向けの全身を覆う水着「ブルキニ」の禁止問題を巡り、フランスで国論を二分する議論が沸き起こった。議論は収束する気配を見せず、来春のフランス大統領選の争点にもなりつつある。

政権内、野党内でも意見はさまざま

 きっかけとなったのは、7月14日の南仏ニースでの「トラック突入テロ」(死者86人、重軽傷者約300人)だった。この事件を受けて、ニース市などの自治体を中心に約30の地方自治体が「治安」の維持を理由にブルキニ禁止令を発令したのである。

 これに対し、国務院(仏行政裁判での最高裁)が「自由に対する深刻かつ明白な侵害である」として「無効」の判決を出した。だが、ニース市など4自治体は「禁止令続行」を表明し、混乱が続いている。

 オランド政権の内部でも意見が割れている。マニュエル・ヴァルス首相は、ブルキニは「女性の奴隷化」の象徴だと指摘して、禁止令への賛成を表明した。一方、アルジェリア系のナジャト・バロベルカセム国民教育相(前女性権利相)は、禁止令に反対する。バロベルカセム氏は、「禁止令は人種差別発言を助長するものだ。ISのテロリストと女性の服装は何の関係もない」との考えだ。

 野党の共和党(LR)内でも、ブルキニに対する見解は様々だ。8月22日に大統領選への出馬を正式に表明したニコラ・サルコジ前大統領は、「(ブルキニの着用は)イスラム教徒による政治的な挑発だ」と指摘。特別法を制定して厳重に禁止するべきだと主張した。