「おいしい=快感」となる脳の仕組みは?

私たちの命を守る「おいしさ」のセンサー

2016.08.05(Fri)佐藤 成美

 疲れたときに甘いものがおいしく感じ、汗をかいたときに塩分を含むものが欲しくなるのが、本能的なおいしさだ。

 一方、子供のときには苦手だった食べ物が、大人になったらおいしく感じる、また、好物はおいしく感じるなど、食経験を重ねることでもたらされるのが経験的なおいしさだ。

 経験的なおいしさは、人それぞれで基準が異なるが、本能的なおいしさは生まれながらに感じられる共通なものである。ただし、おいしさのメカニズムは複雑で不明な点が多い。おいしさを客観的に評価することも難しいのが現状だ。

味は必要・危険のシグナル

 私たちは普通、甘いものをおいしく感じ、苦いものはおいしく感じない。甘い、苦いといった味覚は、食べ物に含まれている化学物質の刺激が脳に伝えられて、識別されるものである。

 味覚は「甘味」「塩味」「旨味」「酸味」「苦味」で構成されている。このうち、甘味、塩味、旨味は、食経験のない赤ちゃんでもおいしく感じる。甘味はエネルギー源の糖、塩味は生体調節などに必要なミネラル、旨味はタンパク質のもとになるアミノ酸や核酸、それぞれに由来する。つまり、甘味、塩味、旨味は、人体に必要な栄養素の存在を知らせるシグナルとなっている。

 一方、苦味や酸味ばかりを好む人はいないし、赤ちゃんも苦味や酸味は嫌がる。腐ったものは酸っぱくなり、毒のあるものは苦いものが多いため、酸味は腐敗を、苦味は毒素の存在を知らせる味だ。これらの味は危険のシグナルになり、おいしく感じない。ただし、食経験を積んで、安全な食べ物だと認識されれば、コーヒーやビール、梅干しなどのように苦味や酸味のある食べ物もおいしく感じる。これが経験的なおいしさだ。

 つまり、味は食べてもよいのか、悪いのかを判断するためのシグナルになっている。同じように、においや色なども食べ物を判断するための重要な情報だ。人は本能的に人体に必要なものをおいしいと感じ、人体に害のあるものはおいしく感じないようになっている。おいしく感じれば、もっと食べようとするし、そうでなければ、食べるのをやめる。

 人類の歴史をさかのぼれば、食べることは命がけの行為だった。せっかくの獲物でも、毒が含まれているものを食べたら、命を落とすかもしれない。食べ物を見分けるために人類はこの能力を身につけたのだろう。

おいしさは食欲を刺激する

 私たちがどのようにおいしさを感じ、食欲をわかせているのかを、もう少し詳しくみてみよう。

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