(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年7月5日付)

サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)で講演する、イタリアのマッテオ・レンツィ首相(2016年6月17日撮影)。 Photo by kremlin.ru, via Wikimedia Commons.

 ブリュッセルのある高官は先週、徐々に高まるイタリア銀行システムの危機――および400億ユーロ規模の銀行救済に関し、国家支援の規則の免除を訴える要請――を、イタリア喜歌劇の出し物として一蹴した。

 このような態度が続くようなら、欧州連合(EU)は2011年のユーロ圏危機の悲劇的な再現の引き金を引く恐れがある。

 イタリアの銀行をめぐる対立は、英国が国民投票でEU離脱を決めてからわずか数日で勃発した。英国の投票結果は部分的に、移民に対する庶民の怒りに直面しても、現実主義を見せようとしない好戦的なEUによって引き起こされたものだ。

 国内銀行システムの危機が高まっているイタリアが、次の試練となる。イタリア最大級の金融機関の株式は、過去2カ月間だけで最大で半値に落ち込んだ。イタリア市場で第3位の規模を誇るモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(MPS)は今、純資産の価値のわずか10%程度の水準で売買されている。

 合理的な説明は難しい。銀行各行の不良債権の数字はひどいが、それを言えば2カ月前もひどかった。

 冷徹な分析は、プラス材料を強調するだろう。イタリア最大の金融機関であるウニクレディトは今、ジャンピエール・ムスティエ氏という確かな経営者をトップに据えている。長年の懸案だった問題を抱えた相互銀行同士の合併を促進する新たな法律も可決された。資金に対するアクセスは潤沢だ。