「これから英国とEUとの間で政治・経済の分離に向けた長く複雑な交渉が行われ、世界の金融市場は混乱が続く可能性がある」
著名投資家ジョージ・ソロス氏は6月25日、ウェブサイト「プロジェクト・シンジケート」への寄稿でこう述べた。同氏は「2007~2008年の世界金融危機と似たような金融市場の危機が解き放たれた」と見る。
国民投票による英国のEU離脱決定で翌日(6月24日)の世界の金融市場は大荒れとなり、日本の株式市場の下げ幅は世界最悪で2008年9月のリーマン・ショック時よりも大きかった。
冷静に考えてみると、リーマン・ショックの時のように世界の金融市場を揺るがすような巨大銀行が倒産したわけではない。英国がEUに対して「離脱交渉を開始する」と通告してから実際に離脱に至るまでには最低でも2年かかるとされており、しばらくの間は実体経済にこれといった悪材料があるわけではない。そのため日本では「ユーロ圏景気の失速はない」「世界経済への影響は限定的」との見方も有力になってきている。
だが、筆者は「リーマン・ショックのように、デリバティブ市場を震源地とする金融危機が早ければ数カ月以内に発生するのではないか」と危惧している。
ポンドは暴落、英国債は2段階格下げ
デリバティブ(金融派生商品)は元々株式や債券、外国為替などの金融商品のリスクを軽減されるために開発された。最近では、リスクを覚悟して高い収益性を追求する手法として用いられるのが一般的になっている。