かつて日本における国債の発行市場は、大蔵省(現財務省)を中心に参加者の合議で価格を決めるシンジケート団が取り仕切っていた。その後、市場メカニズムへの移行が実施され、シンジケート団による国債の引き受け制度は廃止された。しかし、PD制度という新たな仕組みが導入されたことで、実質的にはシンジケート方式による国債消化に近い形が温存されている。
この制度が従来の枠組みを引き継いでいることは、本来、債券ディーラーではないはずのメガバンク各行が、プライマリーディーラーの資格を保有していることからも伺い知ることができる。
日本政府から国債を引き受け、機関投資家に販売する役割を持つPDは、流動性を確保するために存在しており、自身が投資家として積極的に国債を長期保有するわけではない。財務省から国債を引き受けたPDは利益を上乗せして機関投資家に転売することで利益を得る。
つまりPDは、最終的に国債を購入する投資家がいる限り、確実に利益を出すことができる。一方で、政府による国債発行のタイミングや機関投資家のニーズをうまく調整し、需給のバランスが崩れないようにうまく取引しなければならない。
PD離脱の直接的な理由はマイナス金利政策
こうした役割は通常、証券会社が担うことになるのだが、日本の場合、少し様子が異なっている。現在、PD制度の資格を持つ金融機関は22社あるが(三菱UFJ銀行が抜ければ21社になる)、この中にはメガバンク3行が含まれている。
メガバンクは、本来、国債を購入する機関投資家であって仲介事業者ではない。つまり売り買いの間に入る事業者が国債の最終的な買い手を兼務している状態であり、市場の透明性を考えた場合、あまり望ましい状況とはいえない。理屈上、メガバンクは自社に有利になるように価格を調整することができてしまうからである。