黒一色のニカーブをまとう女性たち
イエメンの首都サナアは「アラビアン・ナイト」の世界そのものだ。砂糖菓子のような薄い飴色の家屋が建ち並ぶ街に夕日が落ちていく様はエキゾチックだし、取っ手のついた扉が立ち並ぶ街路は迷路のようで、白いチョークで×さえ記せばここはすぐに、盗賊に追われるアリババの脱出路になる。
迷路のような市場のスークには色とりどりに盛られたスパイスのにおいがたち込め、男たちは三日月型に曲がった短剣を腹に差して闊歩していた。危険な感じはない。いわく、「ジャンビーヤ(短剣)は14歳を超えた男子が男の証に差すものであり、抜いて戦うものではない」。武士の刀のようなものなのだろう。行き交う女たちは目と指先のほかすべての肌色を、全身を覆う布服である黒布のニカーブで隠している。
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