トランプ氏、税制案で方針転換 富裕層への増税を示唆

米ワシントン州リンデンで開かれた選挙集会で演説するドナルド・トランプ氏(2016年5月7日撮影)。(c)AFP/Jason Redmond〔AFPBB News

 アメリカ共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏が、「アメリカはドイツ、日本、韓国などの同盟国を守っているのだから、それらの同盟国は米軍駐留経費の全額を負担すべきだ」と公言した。

 日本ではこの言動がメディアに大きく取り上げられ、日本政府も反発している。だが、アメリカでは極東軍事戦略に関与している軍関係者以外にはほとんど関心が持たれてはいない。それはトランプ候補の発言の内容が、専門知識のある人々以外の多くのアメリカ人にとってはさしたる疑問も感じられず、「当然」と受け止められているからかもしれない。

 8年前の大統領選挙の際には、当初は優勢であったヒラリー・クリントンにせよ現オバマ大統領にせよ、民主党候補者が大統領になれば「間違いなく軍事費が削減されアメリカの軍事力が低下するであろう」と多くの米軍戦略家たちが危惧していた。その危惧は現実のものとなったどころか、オバマ政権が2期続いたため国防費は大削減され、米軍戦力は予想を大きく上回って弱体化してしまった。

 トランプ候補に対しては、少なくとも米軍戦略家の間ではこのような危惧は囁かれていない。同候補は、基本的には国防予算を増額して(といっても大削減された軍事費を10年前の水準に戻す努力を開始するということになるのであろうが)軍事力の弱体化に歯止めをかけ、“世界の警察官”としての地位を復活させると公言しているからである。