日本に個性的な博物館や科学館が増えてきている。たとえば東京・台場にある日本科学未来館。館長が宇宙飛行士の毛利衛氏であることでも知られているが、実際に行ってみると大人も子供も楽しめるユニークな企画展や、最新の科学技術を紹介する常設展など、魅力的な展示がたくさんある。
また、2013年に東京駅近くのJPタワーにオープンしたインターメディアテク。「学術文化総合ミュージアム」と名付けられたこちらの博物館は、東京大学と日本郵便が共同運営しており、芸術や文化を織り交ぜ、五感に訴えるようなアーティスティックな博物館となっている。また、東京大学が運営しているため、入館が無料なのもポイントだ。
最近はこのように、博物館の敷居が下がってきている。従来までの、息をひそめて物音を立てず、おそるおそるガラス越しに展示物を観察するような博物館から、見た人が楽しめるような博物館へと、博物館と私たちの距離はだんだんと近づいているように思う。
今回は、そんなユニークな博物館のうち、大学発、なかでも特に地域住民に開かれた博物館を紹介する。
獣医学ならではの迫力と見ごたえ
訪れたのは、2015年9月にオープンした「麻布大学いのちの博物館」。神奈川県相模原市にある麻布大学構内にあり、こちらも入館は無料だ。正門を入るとすぐに馬場があり、その左手奥に茶色を基調とした半円形の建物が見える。
馬場があるのは、麻布大学が獣医学を扱う大学だからだ。昨年創立125周年を迎え、獣医師の総輩出数は日本一を誇る。実は私も卒業生のうちの1人である。
今回は博物館の上席学芸員であり、麻布大学の元教授でもある高槻成紀氏に解説をしてもらいながら博物館を見て回った。
エントランスを抜けて博物館へと足を踏み入れると、まず目に入るのはパーテーションで9つに仕切られた正方形のショーケースだ。中には色鮮やかな展示物が並んでいるが、書いてあるのは名前くらいで説明書きはない。
その脇には、オオカミの骨標本。順に、オオカミサイズのイヌ、中型の柴犬、小型のポメラニアンと骨標本が並んでいく。オオカミの家畜化の歴史を目で見て実感することができるのも、獣医学系の大学ならではと言えるだろう。