小笠原で出会ったクジラのブリーチング。筆者と同行したツアー参加者が見事、撮影に成功。Photo by Dr. Jagannathan Srinivasaraghavan (Ashok Van)

「エコツーリズム」という概念をご存知だろうか。“エコ”が叫ばれるようになって久しいが、意外と日本ではエコツーリズムというものはまだまだ普及していない。

 そこで、今回はまず、私が小笠原諸島で出会ったエコツーリズムについて紹介していきたい。

片道25時間半の切符

 私は高校生で作家デビューしたが、もともと獣医になりたかったため、獣医学科に進学した。現在も大学院で分子生物学を研究しながら、小説も執筆する生活を送っている。こうして学生と作家という2足の草鞋を履き続けてもう10年以上が経った。

 こういった特殊な経歴のせいかどうかは知らないが、私は常に各方面にアンテナを伸ばし、何かおもしろいものはないかと探すのがクセになっている。何でも自分で体験してみたくなってしまう性分、と言ってもいい。

 だから、小笠原旅行に誘われた時も、異論はなかった。東洋のガラパゴスと言われる小笠原の生態系にも興味があったし、唯一の上陸手段は船、しかも25時間半もかかる、時代に逆行した不便さに、「今行っておかないともう行けないかもしれない」という気持ちがむくむくと頭をもたげた。

 そんなわけで、私は小笠原行きを決断し、そしてエコツーリズムを体験することになった。