(文:内藤 順)
ビジネスのことであれ、社会全体のことであれ、誰だって正しい方向へ努力したいと思っているはずだ。だがその努力は果たして全体最適へと向かっているのか、それとも部分最適に過ぎないのか。分からぬところに問題がある。
判別を難しくさせているのは、多くの人がいとも簡単に専門領域にとらわれ、視野の狭い状態へ陥ってしまうためだ。先の金融危機など、その顕著な例と言えるだろう。誰もが知らぬ間のうちに、ちっぽけな専門家集団、社会集団、チームやグループの中へ閉じ込められてしまう状態──著者はそれを「サイロ」と呼ぶ。
大企業病、組織の硬直化、派閥争い、セクショナリズム、官僚主義・・・。いわば企業における失敗の要因として語り尽くされたかのように思える本テーマに新たな風を吹き込んでいるのは、文化人類学の視点である。著者は、かつてタジク人の風習をフィールドワークした時の経験に基づき、その対象を特定の企業や金融機関、そして学問分野へと広げた。
ソニー、アップル、Facebookの違い
本書は、なぜサイロが形成されるのか? そしてサイロにコントロールされるのではなく、われわれ自身がサイロをコントロールする術はあるのか? これらの問いかけを、数々の事例とともに検証していく。