(文:村上 浩)
この200年間における人類の平均寿命の伸長度合いには目を見張る。1840年を起点にとれば、我々の平均寿命は1時間あたり15分も伸び続けており、この200年で倍になった計算となる。
しかしながら、最先端テクノロジーをもってしても不老不死の実現はおろか、150歳まで生きることすら全く不可能に思える。なぜ、ヒトは老いから、死から逃れることができないのか。
人類が思考を手にしたときから問われ続けているだろうこの難問に、エディンバラ大学進化生物学の教授である著者は、進化論を武器に切り込んでいく。
進化論を軸に考えれば、最初に疑問に思うべきなのは「なぜ、ヒトは永遠に生きられないのか」ではなく、「なぜ、ヒトはこれほど長く生きられるのか」であることがよく分かる。著者は巧みな比喩と刺激的なエピソードを交えながら、進化が老化と死にどのような影響を与えてきたのかを教えてくれる。またその過程を通して、自然選択がどのようなものであるかが理解できる。