中国GDP、14年は7.4%増 24年ぶり低水準

中国・山東(Shandong)省鄒平(Zouping)の工場で働く人たち(2014年12月31日撮影、資料写真)〔AFPBB News

1.繰り返される中国発世界金融市場混乱

 年始早々、中国の株価大幅下落が世界中を動揺させた。2015年央以降、中国の為替・株式市場の混乱が世界の金融市場の混乱を招く事態が繰り返されている。

 その背景は、第1に、中国経済のプレゼンスが巨大化し、世界経済を大きく左右するため、中国の経済指標や金融・為替市場の小さな動きでも世界中の注目を集めるためである。

 中国以外のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国やアセアン(東南アジア諸国連合=ASEAN)など他の発展途上国で同様の金融市場の混乱が生じたとしても、これほど世界の金融市場は動揺しないはずである。

 第2に、中国政府が市場との対話に不慣れであるほか、政策運営の透明性が不十分であるため、不必要な憶測を招くことである。

 本年初の株価大幅下落は、昨年6月の株価暴落を食い止めるために政府が国有企業などに対して株式を買い支えることを命じたことが発端である。

 政府は国有企業などに対して半年間は売らずに残高を維持するよう指示し、その期限が1月8日に来るため、大量の株式売却による株価の下落を予想した市場参加者がその前に売り逃げようとするのは予想されていた。

 株式市場が以前の安定した状態を取り戻していないことは明らかだったことを考慮すれば、昨年12月前半などもっと早い段階で買い支えのために保有している株式の売却解禁時期を延期すべきだった。

 これも中国政府が市場との対話に不慣れであることを示した事例である。

 第3に、先進国のメディア関係者やエコノミストの中国経済および金融・為替市場に対する理解が不十分であるため事実を誤認することが多いことである。

 中国経済を報道する記者の多くは、政治の影響、独特な行政・経済制度等の仕組み、経済・産業構造、地理的特徴、経済政策運営の特色など、中国経済に関わる制度や特殊事情に幅広く精通している。いわば中国の専門家である。

 ただ、その多くは国際部あるいは社会部出身であるため、日銀クラブやFRB(米連邦準備理事会)ウォッチャーなどの経験を通じて、金融・為替市場の動向や中央銀行の市場との対話のあり方などに精通した記者は極めて少ない。

 昨年中国の金融・為替市場が混乱した原因は、金融当局をはじめとする中国政府が市場との対話に慣れていなかったことであるが、もしそれを報道した記者が金融当局などの意図を的確に類推し、実体経済への影響も限定的であることなどを正確に分かりやすく報道していれば、市場参加者がこれほど動揺することはなかった。

 しかし、残念ながら、日本のみならず欧米諸国の主要メディアを含め、市場参加者にそうした事実をきちんと伝えるメディアがほとんど存在していない。

 多くのメディアやエコノミストは中国の為替・株式市場の混乱を中国の実体経済そのものの混乱を反映している現象と捉え、そのように説明した。そのために世界中の市場参加者は中国の金融・為替市場の混乱を中国経済そのものの不安定性を反映していると誤解した。これが世界の金融・為替市場の混乱を招く要因となった。

 もし日米欧の一定数の有力なエコノミストや政府関係者などが中国政府の金融当局や経済政策担当部門、あるいは中国政府の政策運営に精通した優秀な中国人エコノミストと中国語で直接対話することができれば、メディアの誤報をすぐに見破り、市場関係者の誤解を修正することができる。

 しかし、実際にはそうした能力を持つエコノミストはごく少数しか存在しないため、メディアの誤報が事実であると信じられてしまう状況が続いている。

 中国政府が市場との対話能力を向上させるには時間と経験の積み重ねを要する。また、中国経済を報道する記者の多くが金融・為替市場の実態を理解する専門知識を身に着け、金融当局等の市場との対話に示された意図を見抜けるようになるにもやはり時間を要する。

 すなわち、上記の3つの要因は、今後1、2年はいずれも変化しない、あるいは解決されないと考えられる。

 その点を考慮すれば、しばらくの間は、中国政府の市場との対話の不慣れによる中国市場の混乱に端を発し、メディアが政策意図や実体経済への影響を誤解して中国経済悲観論を強調し、世界中の市場参加者がそれを信じて振り回され、金融・為替市場が混乱するという現象が繰り返される可能性が高い。