北欧フィンランドが「ベーシックインカム」の導入を検討していると報道されたことで、国内でも再び関心が高まっている。この制度については賛否両論あるが、論点が十分に定まっているとはいえない。
ベーシックインカムに関する議論は、社会保障の分野だけにとどまるものではなく、労働市場のあり方や市場メカニズムの是非など、幅広い分野と関連している。逆に考えれば、ベーシックインカムについて議論するということは「どのような社会システムを望むのか」について議論することと同じである。
実際の導入は、財源という大きな問題があり、そう容易なことではない。だが、導入の是非について議論することの意義は大きいだろう。
以下では、ベーシックインカムについて論点を整理するとともに、その実現可能性について考察してみたい。
自助努力と最低限支援の組み合わせ
ベーシックインカムは、全国民が最低限の生活を送るために必要な金額を無条件で給付するという制度である。日本をはじめとする多くの国は、生活が苦しいと考えられる人たちに受給資格を限定する形で、生活保護などの社会福祉サービスを提供している。