「あのビルも売却したのか・・・サムスンは本気だね」。2016年1月12日、ソウルで昼食をともにした韓国大手新聞社の幹部がこう漏らした。サムスングループの資産・事業売却が止まらない。韓国の産業界では「サムスンのリストラの持つ意味」について関心が集まっている。
2016年1月8日、サムスン生命保険はソウル中心部にある本社社屋を建設大手の富栄(プヨン)に5800億ウォン(1円=10ウォン)で売却することを明らかにした。
象徴的なサムスン生命本社ビル売却
サムスン生命の本社ビルは、ソウル中心部のソウル市庁(市役所)近くにあるグループを象徴するビルの1つだ。地下5階地上25階で、1984年に完工した。
サムスングループの創業者で現在病床にある李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)グループ会長の父親である李秉喆(イ・ビョンチョル)氏が当時、最高の資材とデザイナーを使って建設したビルだった。
周辺には「サムスン本館」などのビルが並び、一時は「サムスン村」と言われた一角の中心的なビルだった。
サムスングループの金融ビジネスの中核企業であるサムスン生命は、もともと韓国内で多くの優良不動産を保有している。その中でも、この本社ビルは「ピカイチ」の物件だ。
サムスン生命は、この本社ビルだけではなく、昨年あたりから優良不動産を次々と売却している。
李健熙会長の愛着深い鍾路タワーも
本社ビルから徒歩15分ほどのやはりソウル中心部にある「鍾路(チョンノ)タワー」もその1つだ。
このビルは、最上階に近い高層部分が吹き抜けになっている奇抜なデザインで、ソウルのランドマークの1つだった。
日本の植民地時代の1926年に民族資本の百貨店「和信百貨店」があった場所だ。かつてはソウル随一の繁華街の1つだったが、李健熙会長がこの土地を買収して、高層ビルを建設した。