9月3日 帝京大学医学部附属病院(東京都板橋区、病床数1154床)は記者会見を開き、多剤耐性「アシネトバクター」による院内感染を公表しました。

 「2009年8月から翌年8月までの1年間で、抗生剤の効かないアシネトバクターに53人の患者が感染し、27人が死亡した。そのうち9名は感染と死亡との因果関係を否定できない」とのことでした(その後、2009年1月以降の感染者は合計59名に上ると発表)。

 帝京大学医学部附属病院には救命救急センター(ER)があり、地域医療の最後の砦として年間1200件もの3次救急を受け入れています。ここは日本有数の重症患者の治療を行う施設なのです。

 また、産婦人科でも総合周産期母子医療センターを運営し、24時間態勢で周産期医療を支えるなど、東京都23区の北西部と埼玉県南部の医療の中核をなす病院でもあります。

 2009年4月に最先端の設備を備えた新病院としてオープンしたばかりだったこともあり、院内感染の事実は衝撃的なニュースとして伝えられました。

 多剤耐性菌による院内感染は、治療を行う以上100%防ぐことはできません。とはいえ、亡くなった方のご家族にしてみれば、やるせない気持ちになるのも当然でしょう。そして、ニュースを見聞きした大多数の方は「そんな恐い菌が蔓延するなんて、医療体制がなっていないんじゃないか」と思われたことでしょう。

 しかし、医療従事者と一般の方との間には、深く、大きな認識ギャップが存在します。今回の帝京大学の院内感染を巡る報道は、このことを改めて浮き彫りにしたと言えます。

行き過ぎた警察の介入は医療崩壊を加速させるだけ

 記者会見の後、5月に院内感染が発覚してから9月まで国へ報告しなかったこと、専従スタッフがたった1人であったことなどが判明し、帝京大学への非難が集中しました。