網膜疾患の原因解明に始まり、失明を防ぐ治療薬開発に取り組む眼科医がいる。創薬のみならずメディカルデバイスなど失明を救う眼科医療ソリューションを生み出そうと動いている。
「失明率ナンバーワンの病気から人類を救う日本人」でも取り上げた米国ワシントン州シアトル市に拠点を置くアキュセラの窪田良博士だ。
その窪田さんが著書『「なりたい人」になるための41のやり方』を出版したというので、近況をうかがった。
問 欧米で失明原因トップの加齢黄斑変性の治療薬開発が大詰めと聞いています。
答 大規模試験として臨床第2b/3相試験を行っていて、2016年の3月に被験者の投与期間が終了する予定です。
創薬の世界では「No news is good news.(ニュースにならないことは良い知らせ)」と言うのですが、臨床試験を行っている期間中に、知らせがあるというのは、たいていのケースは安全性に問題があるとか、何かしら継続するかしないかを検討しなければならない連絡です。
今現在、安全性に問題があるといった報告は入っておらず、順調に進んでいます。2016年の夏にトップラインデータを公表する予定です。
問 加齢黄斑変性というのはどういう病気なのでしょうか。
答 加齢黄斑変性という目の病気は、緑内障よりも患者数が多く、世界で約1億3000万人もの人々が患っています。欧米では失明に至る原因疾患の1位、日本では4位と報告されています。
進行すると視野の中心部から見えなくなるため、字を書いたりお茶を入れたりする日常的な動作に支障をきたしてしまいます。
失明に至る目の病気はじわじわと進行していくので、普段の生活では気づきにくい。極端と思われるかもしれませんが、視力検査の時に片目を塞いだときや、カメラのファインダーを覗いたときなどに、初めてもう片方の目の視力が低下していることに気がつくというケースもあります。
この病気は、名前の通り加齢に伴い発症しやすくなるのですが、視細胞が光を浴びすぎて網膜がダメージを受けることが発症の原因の1つと考えられています。
症状としては、ドライ型(萎縮型)とウェット型(滲出型)2種類があり、ウェット型の場合は出血で、ドライ型は最初は自覚症状がありませんが、末期になり地図状萎縮を伴うと光を感じる視細胞が死滅して失明に至ります。また、初めからいきなりウェット型を発症することはありません。
ウェット型を発症している方たちというのは、長年ドライ型を患った方たちです。最近の研究では、ウェット型を発症してからもドライ型が進行し地図状萎縮が併発するケースが報告されています。