医療業務のオンライン化が進み、複数のクリニックを1カ所に集めることによる効率化のメリットは以前よりも小さくなった(写真はイメージ)

 2016年、私が診療を行っている全国最大級のメディカルモールである「武蔵浦和メディカルセンター」(埼玉県さいたま市)は10周年を迎えます。2006年のオープン当初は7件だった入居クリニックも11件まで増え、利用して下さる方も毎年増え続けています。

 複数のクリニックを1カ所に集めるメディカルモールという形態は全国に数多く作られました。しかし、業界大手の「日本複合医療施設」(メディカルコンプレックスシリーズを運営)が2010年に倒産したのをはじめ、今は存在していない、ないしは眼科(コンタクト販売)と歯科だけが残り、メディカルモールとはいえない施設も多くあります。

 実は、規模の大きさや診療科目の多さは患者にとって、ほとんどメリットはありません。

 クリニックが継続して利用し続けてもらえるかどうかは、医療提供者が優れた治療を提供できるかどうかで決まります。いちばん大事なのは、各診療科が経験と専門知識をどれだけ持っているかなのです。

 そのため、武蔵浦和メディカルセンターでは、オープン時の宣伝広告に 広告代理店が当初提示した「全ての診療を引き受ける“かかりつけ医”」のような表現をあえて前面には使いませんでした。その代わり用いたのが、「あなたにぴったりの専門家医師が見つかる」というキャッチコピーです。