こんな美女に誘われたら・・・即決でイエス! と答えてしまうだろうか(写真はイメージ)

 私たちは日々、多くの選択に直面している。何かを選ぶ必要が生じたとき、すぐに決める方が良いだろうか、それとも即決せずによく考えるべきだろうか。

 かつては、すぐに決めずによく考えたほうが、より良い決断ができると考えられていた。しかしながら、最近の心理学の研究によれば、多くの場合私たちの結論は、ほとんど最初の印象で決まっている。

 このような研究の成果にもとづく2冊の本を紹介しながら、決断力の鍛え方について考えてみよう。

決断について学ぶための2冊の本

 デイヴィッド・ブルックス著『人生の科学』(原題:The Social Animal)の邦訳には、「無意識」があなたの一生を決める、という副題がつけられている。著者は、ハロルドとエリカという架空人物の物語を創作し、私たちがデートや仕事、子育てなどを通じていかに無意識に決断しているかを、克明に描いている。

 彼はジャーナリストでありながら心理学の論文を読みこなし、その理解はきわめて正確だ。私たちの日々の決断について学びたければ、まずこの本を読むことをお勧めしたい。

 ジョセフ・ヒース著『啓蒙思想2.0』(原題:Enlightenment 2.0)の邦訳には、政治・経済・生活を正気に取り戻すために、という副題がつけられている。

 著者は哲学者であり、やはり心理学の論文を読みこなし、深い洞察にもとづいて本書を書いた。彼もまた、直観にもとづく決断がいかに強力かを認めている。

 さらに、現代では人間の直観を悪用したビジネスや政治が増え、社会が正気を失いつつあることを憂えている。では、どうすれば理性にもとづく決断を取り戻すことができるだろうか? この問いを真剣に考え抜いたヒースの著作は、現代社会を考える上での必読書だ。

 これら2冊に共通しているのは、私たちの理性の力はもろく、容易には直観にあらがえないという考えだ。心理学研究がこの考えを支持する事実を次々に明らかにした結果、ブルックスやヒースのように理性的な人ですら、この考えに抵抗できなくなっている。

 しかし、私はこの考えには批判的だ。みんなが信じ込んでいる「定説」の弱点を暴いて、理性的な決断力を鍛える方法を紹介しよう。