2015年は「ドローン元年」とも言われるほど、ドローンの話題が豊富な1年だった。4月に首相官邸に落下した事件で一般には広く知られるようになったが、それをきっかけに政府は急遽法整備に乗り出し、12月10日から改正航空法が施行されることとなった。
現在市場で普及しているドローンの多くはホビー(趣味)向けだが、ドローン運用の環境が整いつつある中、今後はインフラ点検などの産業向けにもいよいよ活用が進み、市場が大きく膨らむと期待されている。
産業向けとしては、これまでも農薬散布などでヤマハ発動機がドローンを開発・販売しているが、市場は限定的だった。今後は、Amazonが宅配に活用することを発表するなど運輸のほか、インフラや設備点検、測量、警備、災害対応といった分野でドローンの利用拡大が世界的に期待されている。
市場形成のカギとなる国際標準化が進む中、これまで日本は遅れを取ってきたが、皮肉にも首相官邸事件が環境整備の追い風となった格好だ。
千葉大学特別教授で自律制御システム研究所代表取締役の野波健蔵(のなみ・けんぞう)氏は、30年以上にわたりドローンの研究を続けてきた第一人者だ。
一昨年、大学発ベンチャーである同研究所を立ち上げ、2015年2月には量産体制を整え、産業向けドローンの出荷を開始した。また、産業向けドローン市場の形成に向け、国内のサプライヤーやユーザーとしての企業200社以上とコンソーシアムを進めてきた。ドローン市場の現状とこれからについて野波氏に聞いた。
一気に高まった「ドローン」の知名度
──今年はドローンが大きな話題になりました。現状をどうご覧になっていますか。
野波氏(以下、敬称略) 改正航空法が12月10日から施行されましたが、今はドローンの黎明期です。まだすべてが整っていない状態で、混沌としています。