これは冬の音なのだろうと思う。暖炉にくべてある薪が崩れてぱちぱちと爆ぜるのを聴きながらソファにしずんでいると、宿の女主人がブランデーを持ってきてくれた。Macieiraというポルトガルのブランデーだという。
「サービス。今日は特別な日だからね」
ブランデーをすすると、喉の奥がきゅっとしまって、部屋はもう1度あたたかくなる。ぬくぬく。暖炉の火の前に、猫がたくさんあたたまっている。
出身はオランダ、最初はスペインに移り住んだ
「ポルトガルは貧しいのよ、あなたもすぐ分かると思うけれど」
夜明けごろ鉄道駅に到着した私を迎えに来てくれた女主人が、最初に放った言葉だった。
「それにインフラもちゃんとしてないからね、駅まで私がこうして迎えに来るしかないのよね」