ガーナからコートジボワールに向かう長距離バス(15時間)で出会ったおねえさんは、バスの屋根に家財道具一式積んでいた。

 ガーナに留学していたのだという。「英語を学ぶためにね」

 彼女はフランス語圏西アフリカの路上で出会う人には珍しく、流暢な英語をしゃべった。

 ガーナは英語圏で、コートジボワールはフランス語圏だ。日本にいると2国の違いはよく分からないが、もう長いこと政情の安定しているガーナと異なり、コートジボワールでは2010年から2011年にかけて選挙をめぐって混乱が起きてGDPマイナス成長になっていたりして、私が訪問した2013年はまだやっと復活というような時期だった。

コートジボワール・アビジャン

 普通の家庭の、しかも女性なんかだとそんな政治経済不安のあおりをすぐに受けて仕事がなくなるから、彼女は不安定な生活からのブレイクスルーを求めてガーナへ渡ったのだそうだ。「地続きだしね」 それがちょうど2011年の終わるころ。

 ガーナで英語が喋れるようになって、働き口があればそれでいいし、帰ってくるということにしてもいいが、とにかく今持っているものだけでなくて、新しいスキルを身につけなければにっちもさっちもいかない。身につけたところで何が変わるかわからないけれどそれでも。

 閉塞感の中の、何かを変えたい、という気持ちは人を動かすに足るのだろうか。