自社の口腔ケア製品を前にする和光堂 開発本部 マーケティング部 課長補佐の高橋愛子さん

 食べたら、歯を磨く――。当たり前の何気ない日常の動作が、もしできなくなってしまったら。そこに感じるストレス、そして健康への影響は想像以上に大きいものだろう。

 近年、口腔ケアの需要が高まる背景には、深刻な「誤嚥性肺炎」の問題がある。

うがいや歯磨きで細菌を飲み込んでしまうことも

 肺炎は日本人の死因の第3位を占め、65歳以上の高齢者が97%を占める。そして、高齢者の肺炎の中でも特に多い誤嚥性肺炎は、口腔内で繁殖した細菌が、気管に入り、肺で炎症を起こす。つまり、適切な口腔ケアをすることで、予防することができる肺炎なのだ。

 しかし、その予防ケアをすることは、要介護シニアにおいては決して容易なことではない。特に寝たきりの場合や、認知症の人においては自分で歯を磨くことが困難で、その介助は非常に難しいという。

「介助者が要介護シニアの方の口の中を磨く際は、強すぎては傷つけしますし、優しすぎてもきちんと磨けません。どこまで手を入れていいのか、その感覚が非常に難しい」