国際エネルギー機関(IEA)は11月10日発表した「2015年版世界エネルギー見通し」の中で、「現在1バレル=40ドル台の原油価格の回復ペースは緩やかで、80ドル程度に達するのは2020年になる」と予測した。
2020年頃には米国のシェールオイル生産が日量約500万バレルをピークに達するなど、非OPEC諸国の原油生産が同約5500万バレルで頭打ちとなり、石油の需給が再びバランスするというのがその理由だ。つまり、原油の供給過剰は2020年まで続くという展望である。
IEAは低油価が続いている原因の1つとして、価格維持より市場シェアの確保を優先するOPECの戦略を挙げている。確かに今年後半に入り世界の原油生産に占めるOPECのシェアが高まりつつある(11月9日付日本経済新聞)。9月時点でOPECのシェアは4月に比べて0.5ポイント上昇して約40%となった。一方、米国のシェアは0.5ポイント低下して11.5%となった。
米国はシェールオイルの増産で2011年以降原油の輸入を削減してきたが、第3四半期の原油輸入量は日量平均約750万バレルと前期比約30万バレル増加した。これは、OPEC加盟国であるナイジェリアとアルジェリアの輸出攻勢の成果である。イラクも11月に入り米国への原油輸出を加速させている(11月12日付ブルームバーグ)。
米国では国内の精製設備の稼働率の上昇による取り崩し分を上回るペースで輸入が増加しているため、原油在庫の増加が止まらない。10月末時点の米国の原油在庫は4.8億バレルを超え歴史的高い水準となっている。OPECも世界的な石油生産の増加により原油在庫が少なくとも10年ぶりの高水準に達したことを認めた。原油価格はOPECの増産傾向を警戒してブレント価格の下落が顕著になっている(11月12日時点で1バレル=45ドル台)。
ゴールドマン・サックスは「来年にかけて貯蔵能力が不足すれば、原油価格は1バレル=20ドル近くまで下げ余地がある」と懸念している(11月6日付日本経済新聞)。