「私のライムオレンジの木」は、韓国人にとって青少年期の思い出の作品である。
学校では、読書感想文を書かされることもあるし、そうでなくても必読書として勧められることが多い。筆者も高校の頃に読んで異国の地で虐待されながらも逞しく生きる主人公のゼゼに感情移入したものだった。
しかし、この作品は韓国の作家が書いたものではなく、ヴァスコンセロスというブラジルの作家が1968年に出版した自伝的小説である。
ブラジルから遠く離れた韓国でいまだに読まれ続けているこの本は、日本では1974年に「わんぱく天使」というタイトルの翻訳本が出たらしい。でも今では絶版されたそうなので、韓国での人気とは大違いのようだ。
人気ソロ歌手IUの曲が炎上
さて、今回のテーマはこの「私のライムオレンジの木」である。実は、いま韓国でこの作品の主人公ゼゼ(ZEZE)がマスコミを賑わせているのだ。
いや、実際はゼゼからインスピレーションを受けた曲に歌詞をつけて歌ったアーチストが俎上に上っている。
アイドルグループ全盛期の韓国で、ソロでグループに太刀打ちできる存在として注目を浴びているIU(アイユー)。10代でデビューし、同年代のアイドルでもトップクラスに入る可愛さに加え、高音を駆使する歌唱力を備えた完璧なアイドルスターである。
フィギアスケート選手のキム・ヨナが「国民的妹」の存在としてもてはやされた頃、IUもまた「アイドル界の国民的妹」としてもてはやされた。
この間、男子アイドルとのパジャマ姿の写真がネット上に出回ったせいで、アイドルからアーチストへと転身し始める。そんなスキャンダルがあったにもかかわらず、アイドル時代から彼女の出すアルバムはいつもヒットチャートの上位を占める。