クリーンエネルギー技術の商業化のステップ
クリーンエネルギー技術が開発されて最終的に商業化されるまでは、大きく4つの段階に分かれます。
まずは企業や大学の研究室での技術の開発フェーズ、続いて開発した技術を検証するパイロットフェーズとデモンストレーションフェーズ。
そして最後に、開発した技術を仕上げる商業化フェーズです。クリーンエネルギー技術の商業化プロセスを概略化しますと、以下のようになります(図21)。

この一連のプロセスを、仮想的なクリーンエネルギー技術を使って説明します。
1. 技術開発フェーズ
あるベンチャー企業が、セルロース系のバイオマスからバイオエタノールを作る画期的な酵素技術の開発に成功しました。研究室での1日に1リットルのバイオエタノールを製造する装置試験で、上手く性能を発揮することが確認できました。
2. パイロットフェーズ
次のステップとして、この新しい酵素技術を、年間10キロリットルのバイオエタノールを作るプロセスと設備を造って、連続運転させ検証することになりました。
この大きさの設備試験となると実験室では無理なので、外部に土地を確保して試験することになります。
機器の設計や設備の建設期間に1年、実際の設備の稼働、検証期間に更に1年を要し、2年間のパイロットプロジェクトの費用は、設備費、操業費を合わせると数億円単位になりました。
3. デモンストレーションフェーズ
パイロットフェーズでいくつか技術的な課題が発見されたものの、いずれも解決できる目途が立ちました。
今度は設備をさらにスケールアップさせて、年間500キロリットルのバイオエタノールを作る装置で、開発した酵素技術を検証します。
プロセスや機器の設計、建設期間に1年6カ月、加えて連続運転の時間をさらに伸ばし、稼働・検証期間に2年を費やしました。デモンストレーションプロジェクトにかかった総費用は数十億円に上りました。
4. 商業化フェーズ
デモンストレーションフェーズで新たな技術的な課題やオペレーション上の問題点が発見されましたが、何とか解決することができました。いよいよ商業化の準備が整いました。
商業化には規模の経済性が必要ですので、製造設備規模は年間5万キロリットルに決定しました。
総建設費用は数百億円と見積もられ、プロセスや機器の設計、建設、さらにお役所から設備の建設や操業にかかわる様々な許認可の取得に合計3年費やした後、ようやく商業ベースの設備が運転を開始して、新しく開発された酵素技術の商業化が完了しました。