どうしても心を開いてもらいたい。そんな相手がいることがある。それが部下だったり、上司だったり、お客様だったり、夫や妻だったり、子供だったり。
相手に心を開いてもらいたいという悩みは切実な悩みである。私は経営コンサルタントという立場上、経営者や管理職の方からのご相談が多く、部下が心を開いてくれないというお悩みをよく聞く。
会話は仕事上必要な会話のみで、雑談や笑い話をあまりしようとはしない。自分の仕事が終わったらさっさと帰る。
指示した仕事はこなすが、それ以上のことを主体的にやろうとはしない。そんな部下の状況に頭を抱える管理者や上司の方は読者の中にもいらっしゃるのではないだろうか。
職場の雰囲気を作るキーマン
経営の現場の雰囲気や士気は現場のキーマンにかかっていることが多く、この現場のキーマンが部長、課長といった管理職あるいは経営者に心を開いているかどうかで会社のパフォーマンスや一体感、統制力は大きく変わる。
現場には現場の輪がある。その輪の中で主導権を握っているのは現場のキーマンであり、現場における実質的な影響力は経営者や管理職の人間よりも現場のキーマンの方が強い。
そのため、現場の雰囲気や士気を変えるためには、現場のキーマンの協力を得ることは必須であると言える。
そんな状況を打破するために参考となるお話をしたい。
古代ローマの哲学者:アリストテレスは今から約2300年前に「弁論術」という書物を著した。この「弁論術」は相手を説得するためのスキルを解説したものであり、ディベートやプレゼンテーションを重視する欧米の知識層の間では今もなおバイブルとして読まれている歴史的名著である。
2300年もの長きにわたり読み継がれてきたこの書物には、人間心理に関する実に詳細な分析が記されている。