「震災の前は・・・13人家族だったね。息子夫婦も娘夫婦も越しちゃって、仮設に来てからお父さんも亡くなったから、今は一人暮らし」
仮設住宅に今でも住まれている80代のAさんは、苦笑するように話されました。
「仮設の集会も、知らない人ばっかりだから全然出ないの。しゃべりたくなるとバスで街中まで行ってお友達に会うけど、だんだん友達も減っていっちゃって」
震災によるコミュニティー崩壊は、震災から4年以上が経った後もまだ続いています。数十年来の顔見知りばかりいる集落を突然失ったお年寄りにとって、再び顔見知りを増やすということは容易なことではありません。
孤立する高齢者
「前は家でとれた野菜を持って近所に配ったりしてたけども、それもないと人のところに訪ねていかなくなったね」
ある農家の方は、農作物がなくなることでコミュニティーの手段も失ってしまった、と話されていました。山海の幸の贈答や祭事など、これまで人付き合いの潤滑油であった様々な文化が失われたこともまた、人付き合いの回復の障壁となっているようです。
社会的孤立が引き起こすリスクは、孤独死や引きこもりによる認知症、寝たきりのリスクなどを引き起こすと言われています。一人暮らしや社会的な孤立は平均余命を縮めるという報告もあります*1。
それだけでなく、周囲に知らない人間が増えることによりお互いの許容範囲が狭まり、他人に対するが警戒感も高まります。
「この近所は普通、家に鍵なんてかけなかったよ。震災の後になって周りに知らない人が増えたので、家に鍵をかけるようになってしまった」
このような話を、何人もの方から聞きました。
*1=Steptoe A, et al. Social isolation, loneliness, and all-cause mortality in older men and women. PNAS 2013; 11(15): 5797-5801.