広島県廿日市市の伊勢神社に奉納される神楽「大蛇」の一場面。(写真提供:山本健太氏、以下同)

 広島県には、県北西部の「芸北神楽」、瀬戸内沿岸部の「安芸十二神祇」、瀬戸内の島々とその沿岸部に広がる「芸予諸島の神楽」、県北東部の「比婆荒神神楽」、県中・東部の「備後神楽」と5類型の神楽舞があります。

 現在に至るまでには、戦後GHQ統制下の影響や、最近では競技会への参加など、神楽を取り巻く環境にはさまざまな変化がありました。その中で、神楽は地域資源として、どのような発展を遂げてきたのでしょうか。

 前回、前々回のコラムで紹介している宮崎県の神楽に続き、國學院大學経済学部准教授の山本健太氏に聞きます。

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― 前回まで、宮崎県の高千穂町と日影町を例に、地域によって異なる神楽舞の役割についてお聞きしました。広島県の神楽舞にも、そうした地域差はありますか。

山本健太氏(以下、敬称略):舞の特徴だけでなく、発展の仕方や資源としての活用のされ方にも違いがあります。芸北神楽を伝える安芸高田市と、安芸十二神祇を継承する廿日市市のある集落を例にお話ししましょう。