施設が老朽化し、客単価が低下
ホテルオークラは2014年5月、同社の旗艦ホテルであるホテルオークラ東京本館を建て替える方針を明らかにした。東京ではこのところ外資系ホテルの進出が相次いでおり、国内資本のホテルから顧客が奪われるという状況が続いている。オークラも開業から50年以上が経過しており、施設の老朽化と客単価の低下が懸念されていた。
新しい施設は、高さが200メートルの高層棟と、80メートルの中層棟の2つのビルで構成される予定。客室数は550室となっており、現在の400室より150室増えることになる。高層棟にはオフィスも入居する予定となっており、ホテル単体ではなく大型複合施設の運用ということになる。ちなみに、本館の隣にある別館(約400室)は、現状のまま営業を継続するという。
これまでホテルオークラ東京の建て替えについては何度も取り沙汰されてきたが、同社は建て替えについて慎重な姿勢を崩していなかった。その理由は2つあると言われている。
1つは、同ホテルの建つ場所が、大倉財閥の邸宅跡であり、同社にとって極めて重要な場所であること。もう1つは、独特の周辺環境である。
ホテルオークラ東京が建つ場所は、虎ノ門という超一等地なのだが、周囲を見下ろす小高い丘になっている。付近には米国大使館や外国人向けの低層な超高級アパートメントが並び、周辺とは隔絶された独特の雰囲気を醸し出している。こうした環境は高級ホテルとしては最適だが、オフィスビルを備えた複合施設の建設には微妙な立地条件となる。
だが、隣接地の旧虎ノ門パストラル(東京農林年金会館)を森トラストが買収し、再開発の準備が進んだことで状況が大きく変化した。虎ノ門のオフィス街との連続性が確保できる見通しが立ち、同社は建て替えに踏み切ったものと考えられる。