日米で期せずして民主党が政権を担当することになった。それまで政権を担当していた米国の共和党と日本の自由民主党は、福祉関連予算の増加と公共政策分野の財政支出の削減を調和させるため、効率的かつ「小さな政府」政策を推進してきた。
軍事予算削減が火をつけた民間軍事請負会社の勃興
日米両国の民主党政府は、従来、支持母体との関係で「大きな政府」を選択すると言われていた。しかし、リーマン・ショック以後低迷する両国の経済・財政事情は、民主党政府をして「小さな政府」の政策を余儀なくされると思われる。
この政策変更は、両民主党をして政権維持のための苦渋の選択となろう。
米国が公表した「2010年版中国の軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書」は、中国が東シナ海や南シナ海における国益確保を「新たな歴史的使命」に据えたと指摘し、こうした傾向は東アジアの軍事バランスを変更する主要な要因と警告している。
中国は尖閣諸島への上陸作戦を準備しつつあるとの情報もある。
日本の民主党政権下で、中国海軍の増強に備えるうえで必要な装備の強化や人員増が期待できないとすれば、何らかの新たな方策を考慮する必要がある。
米国の国防省はイラク等の海外任務を実施するために、予算と人員の削減に対応する方策として、民間軍事請負会社(Private Military Company、PMC)にアウトソーシング(outsourcing)してきた。
ジョージ・W・ブッシュ政権のディック・チェイニー副大統領のPMCとの密接な関係が、これに拍車をかけた。バラク・オバマ政権になっても、米軍が海外における任務を遂行するに際して、PMCの存在を抜きにしては語れないほどである。
アフガニスタンでは52社、3万~4万人の民間人が働く
2010年8月現在、アフガニスタンでは欧米系PMCの52社が内務省に登録し、3万~4万人の社員が働いているという。
PMCは、建物や要人の警備、軍事基地の建設、物資輸送をはじめとして、基地内の清掃、軍服の洗濯、基地娯楽施設に至るまで、ありとあらゆる職種の効率的なサービスを、国家、軍隊、企業、国際機構などに提供している。
PMCは主な提供サービスに応じて、民間警備保障会社(Private Security Company、 PSC)、軍事コンサルティング会社(Military Consulting Firm、MCF)、危機管理会社(Risk Control & Risk Management、RCRM)等の名称を使用している。
PMCへアウトソーシングするメリットは、民間業者から低コストで質の高い業務の提供が期待できるとともに、軍事要員が本来の業務に集中することで質の向上が期待できる点にある。