マレーシアで反テロ法案が可決、IS感化の攻撃を懸念

〔マレーシア議会AFPBB News

 イスラムの穏健国家で、日本では移住希望先で8年間連続(2006年から2013年、財団法人ロングステイ財団)「世界一の人気国」で知られるマレーシア。

 一方、国際社会では数日前に閉会した東南アジア諸国連合外相兼首脳会議開催中(クアラルンプール)にIS(イスラム国)の指令を得たマレーシア人12人が市内でテロ計画容疑で逮捕されるなど、ISのテロリスト中継地点と警戒され、最近では国の強権化を拡大する法改正が次々に断行され、国連が異例の非難声明を発表するなど欧米諸国の懸念を招き、「独裁国家への変貌」への脅威が高まっている。

 2014年12月、クリスマス休暇でハワイを訪問中の米バラク・オバマ大統領がマレーシアのナジブ・ラザク首相とゴルフを楽しむ2人の“親密ぶり”がニューヨークタイムズ紙などで世界に報道された。

 2014年4月、オバマ大統領は日本などアジア歴訪の中でマレーシアを訪問、在任中の米大統領としては約半世紀ぶりのことだった(参照12)。

 2人がツーショットで報道写真に収まったのはその時以来で、ホワイトハウスは「両国間のさらなる緊密な関係構築を図った」と声明を発表、「各国首脳とは極めて実務的な関係で、休暇中には仕事を持ち込まず、家族や友人など限られた人しか接触しない大統領には珍しい」(ニューヨークタイムズ紙)とそのゴルフ談義の真意が記者の間でも話題になった。

オバマ大統領期待の裏で・・・

 マレーシアは2015年、東南アジア諸国連合の議長国を務めるため(4月27日、同首脳会議主催)、域内の政治経済関係や安全保障について協議されたと憶測されたが、実際は、オバマ大統領が進めるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への協力と、中近東諸国などイスラム圏やISへの対応などが協議されたようだ。

 オバマ大統領はナジブ首相がこれまでにない「穏健派のイスラム圏のリーダー」で、イスラム諸国への橋渡しや影響に奏功すると判断していると見られる。しかし実際には、「穏健派でもなく、台頭する最大与党UMNO(統一マレー国民組織)の右派勢力の圧力に屈し、イスラム保守色を強めている」(米国の元駐マレーシア大使のジョン・マロット氏)という見方も強い。

 マレーシアは、イスラム教、仏教、キリスト教の三大宗教が平和的に共存する世界でも稀有な国。国教はイスラム教だが、人口約3000万人の約66%を占めるイスラム教徒以外は、約20%が仏教徒、約10%がキリスト教徒で、憲法でも信教の自由が認められてきた。

 しかし、前述の元大使が警告するような事態がここ数か月に立て続けに起きている。