一方ウォールストリート・ジャーナルは、USAトゥデイが得意としていたホテルなどの分野に進出、一般大衆紙市場に攻勢をかけている。
ウォールストリート・ジャーナルは2010年3月までの過去1年間でホテルへの発行部数を15%増やし、1日当たり4万部を配布している。USAトゥデイのホテルへの配布数は1日40万部と依然多いが、2007年の80万部から半減しているという状況だ。
広告主とビジネス戦略を構築へ
AP通信が入手したスライド資料によると、USAトゥデイは営業部門とコンテンツを連携させるビジネスモデルを推し進める計画を立てている。このことから同紙のニュース制作における言論の自由が脅かされるのではないかと言われている。
これについて、同紙発行人であるデビッド・ハンク氏は「いかなることがあっても我々は信頼性を保つことに妥協しない」と述べ、きっぱりと否定している。
しかし、同氏は「広告主と協力してビジネス戦略を構築することになんら問題があるとは思わない。この戦略を実行することで、繁栄の未来を実現し、ジャーナリズムビジネスを継続することができる」とも述べており、懸念は広がっている。
USAトゥデイはまだ具体的なビジネスモデルについては発表していないため、計画はまだ策定途中と見られているが、既にこの組織再編の効果について疑問視するアナリストもいる。
「こうした大規模な組織再編は、口で言うのは易しいが実現させるのは困難だ。マルチメディア媒体への移行というコンセプトはシンプルでも、遂行するには複雑な問題がある。しかし、成功の保証はなくても立ち止まっていれば状況はより悪化する」と米投資銀行のアナリストは指摘している。
USAトゥデイとその親会社である米ガネットだけでなく、米国の新聞社すべてが今直面している閉塞感を表しているコメントだ。
第1面に「ジープ」の全面広告
USAトゥデイはこの7月、第1面に米クライスラーの四輪駆動車「ジープ」の全面広告を掲載した。これは「USAトゥデイ」のロゴとジープの広告だけが第1面に載るという、同紙としては前代未聞の試み。
これを見た創業者のアレン・ニューハース氏は、発行人のデビッド・ハンク氏を激しく非難したと伝えられているが、USAトゥデイは新たな収益源を確保しようと模索途中にあり、その過程で様々に試行錯誤しているとニューヨーク・タイムズの記事は伝えている。
「カラー紙面や全面に及ぶ全国天気図など、USAトゥデイにはかつて他社がやらないイノベーションがあった。しかしそうしたものは今やどの新聞もやっている。ここ何年もイノベーションとはかけ離れていたUSAトゥデイは、もう一度新たな試みをやってみるべきなのかもしれない」
同紙の元記者はこう話しているという。
