チュニジア博物館襲撃 「警備に不手際」 大統領が認める

チュニジアのカイドセブシ大統領は、博物館襲撃に関連して「治安上の不手際」があったと認めた(写真はチュニス・カタルゴ国際空港の特殊部隊員ら)〔AFPBB News

その朝、隣の議会にはテロ対策の関係者が集まっていた 

 3月18日12時半頃、チュニジアの首都チュニスのバルドー(Bardo)国立博物館 1においてカラシニコフで武装した男ら(少なくとも2人2)による襲撃事件が発生した。

 男2人は観光客など博物館を訪れていた人々に銃を乱射、その後館内で人質を取り、立てこもった。15時15分、特殊部隊の介入により人質は解放され、テロリストは殺害されたが、この事件において21人が死亡(チュニジア人1人と20人の外国人観光客、うち日本人3人)、約40人が負傷した。

 このバルドー博物館は議会に隣接しており、事件当日の18日の朝には、テロ対策について軍や治安機関関係者が集まっていたという。

 事件後、チュニス・カルタゴ空港とシャルル−ニコル(Charle-Nicolle)病院に危機対応センターが設置された。大統領は緊急会議を開き、首相、軍(陸・海・空)のトップなどが集まり、軍が憲兵隊とともに治安強化に対応することになった。

 犯行におよんだ2⼈の⾝元は、27歳のチュニス(El Omrane superieur)出身のヤシン・ラビディー(Yassine Laabidi)と、カスリーヌ県(Kasserine)3出⾝の⾼校生ジャーバール・ハシュナウイ(Jabeur Khachnaoui)と判明した。そして、共犯と思われる人物や関係者が次々と逮捕された。

 19日には、ダーイッシュ(イスラム国)が犯行声明を出した。この中で、「ターゲットは議会ではなく博物館だった」、「実行犯はチュニジア人である」と述べ、「新たに襲撃する」と脅迫している。

 そして26日、チュニジア内務省は、共犯と疑われる23人(すべてチュニジア人、うち女1人)が逮捕されたと発表した。また、モロッコ人2人、アルジェリア人1 人、チュニジア人1人(銃撃テロを起こした2人にカラシニコフを提供した人物)が逃走中であるという。

 モハメド・ナジェム・ガルサリ(Mohamed Najem Gharsalli)チュニジア内相は、「これらの容疑者は、”管理・統括”、”企画”、”実行”の3つのグループに分かれて活動していた」「この事件はテロリストのロクマン・アブサクル(Lokmane Abou Sakhr:アルジェリア人、アリジェリア国境付近で活動するAQIM系4グループであるオクバ・イブン・ナファの幹部の1人)によって行なわれた」と述べた。

 内務省報道官は「プロパガンダの面でイスラム国がこの事件を利用し犯行声明を行なったのであろう」と説明しており、実行グループはオクバ・イブン・ナファ5であることを強調している。

1 地中海諸国における主要博物館の1つ。アフリカ大陸ではエジプト考古学博物館に次ぐ規模。
2 3月22日、エセブシ(Essebsi)チュニジア大統領は、「監視カメラには治安機関に殺害された2人以外に、犯行に関わったとされる3人目の人物が映っている。現在捜査は進行中」と述べた。
3 チュニジア西部。ジハーディストの多いところ。
4 AQIM:イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(Al-Qaida in the Islamic Maghreb)

5
オクバ・イブン・ナファ(Okba Ibn Nafaa)は2014年9月、ダーイッシュ“支援”を表明している。“忠誠”ではない。