私が敬愛する中條高徳氏が、2014年12月に逝去された(享年87歳)。

 中條氏は、陸軍士官学校(60期)時代に終戦を迎え、その後、旧制松本高校(現信州大学)、学習院大学で学んだ後、朝日麦酒(現アサヒビール)に入社され、常務取締役営業本部長として「アサヒスーパードライ」作戦による会社再生計画で大成功を収めた方である。その後、アサヒビール副社長、アサヒビール飲料代表取締役会長などを歴任された。私が出会ったのは3年前で、日本戦略研究フォーラムの会長としてであった。

陸士入学、共産党入党の共通点とは

 中條氏とはいろいろな話をしたが、いちばん嬉しかったのは、「君が共産党に入党したのも、私が陸軍士官学校に入ったのも、思いは同じだ」という趣旨の話をしていただいたことだった。

 私は1966年に18歳で共産党に入党したのだが、当時、「自分は何のために生まれてきたのか。自分など社会にとって不要な人間ではないのか」などと自分の存在意義を見つけることができず悶々としていた。そんな時に出合ったのが社会主義革命を目指す日本共産党だった。「資本主義から社会主義への発展は必然」というマルクス主義の理論は、人類解放の理論として私を強くとらえた。共産党に入党することは、歴史の「必然的」な発展に寄与するというのだから、そこには強烈な使命感が付与されるのは当然であった。

 もちろん共産主義は、所詮はユートピア(どこにもないところ)思想に過ぎなかった。現実の社会主義体制は、人類解放どころか、専制主義的一党独裁の人類抑圧社会でしかなかった。だが当時、私的利益をいっさい求めず、革命のために自己犠牲をいとわないというストイックな生き方は、世間知らずな若い私を惹きつけたのだった。