イスラム国の操縦士焼殺、狙いは「恐怖」による優位性 専門家

都内で、ヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉についてのニュースを映したテレビ画面の前を通り過ぎる人(2015年2月4日撮影)〔AFPBB News

 2月3日(日本時間4日未明)、イスラム国は、ヨルダン軍パイロットのムアズ・カサスベ中尉の処刑動画をネットで公開した。この件を受け、ヨルダンのモマニ情報相は「1月3日に殺害されたとの情報を得ている」と発言した。事実であれば、時系列的には以下のようになる。

・2014年12月24日  カサスベ中尉がイスラム国に拘束される。

・2015年1月3日  カサスベ中尉が処刑される。

・1月17日  安倍首相が訪問先のエジプトで、周辺国への2億ドルの援助を表明。

・1月20日  イスラム国が後藤氏・湯川氏を登場させ、72時間(3日間)の期限をきって、日本に身代金を要求する動画を公表。

・1月24日  イスラム国が、湯川氏の遺体写真を持つ後藤氏の静止画を公表。後藤氏の声で、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚と後藤氏との交換を要求する音声メッセージが付されていた。

・1月27日  イスラム国が、カサスベ中尉の写真を持つ後藤氏の静止画を公表。後藤氏の声の音声メッセージで、24時間以内の期限で、リシャウィ死刑囚との交換を再度要求した。同時に、合意がなされない場合、カサスベ中尉を後藤氏より先に処刑することを宣告した。

・1月28日  ヨルダン当局が、カサスベ中尉とリシャウィ死刑囚の交換容認を発表。

・1月29日  イスラム国が、後藤氏の声の音声メッセージを公表。当日日没までにリシャウィ死刑囚をトルコ国境に移送しなかった場合、カサスベ中尉を処刑すると宣告した。これに対し、ヨルダン当局はカサスベ中尉の生存確認を要求した。

・2月1日  イスラム国が、後藤氏の処刑動画を公表。

・2月3日  イスラム国が、カサスベ中尉の処刑動画を公表。

・2月4日  ヨルダン当局が、リシャウィ死刑囚ほか1名の死刑を執行。

 つまり、カサスベ中尉は最初から殺害されていたものの、リシャウィ死刑囚奪還の見せ札として利用された可能性があるのだ。