1月7日から3日間にわたりフランス全体を不安と悲しみに陥れた一連のテロ事件では、合計17人が死亡し、人々に大きなショックを与えた。

 1995年に起きた爆弾テロ以来、20年ぶりにフランス国内で起きたこのイスラム過激派連続テロ事件は、これからフランスが解決しなければならない多数の課題をあらわにしたともいえる。

「反西洋」という共通の目的で結びつく過激派

フランスが堅守する「表現の自由」、その適用範囲とは

パリで行われた反テロ集会で、横断幕を掲げる参加者〔AFPBB News

 事件後には、容疑者の1人アメディ・クリバリがユダヤ系スーパーに立てこもっていた際に「この2件の事件は連帯しておこなった」と仏メディアBFMTVとの会話の中で述べていたとわかり、クリバリとシャルリ・エブドを襲撃したクアシ兄弟(特に弟のシェリフ)の繋がりも明確になった。

 クアシ兄弟は、「AQAP(アラビア半島のアルカイダ:イエメンを中心に活動する)からの指示で、支援を受けてこの事件を起こした」と発言しており1、過去にイエメンに滞在した2ことなどからAQAPとの繋がりが強いと見られるが、クリバリはむしろIS(いわゆるイスラム国、またはアラブ語でDaesh [ダーイシュ] )に忠誠を示していた。ここに複雑化したグローバルテロリズムの一面が伺える。

 アルカイダとISは競争関係にあり、イスラム過激派グループの中でのリーダーシップの争いをしていると言えるのだが、結局は「反西洋」という共通の目的を持っている。

 そうしたなか、クアシ兄弟やクリバリは、「共通の敵」3を襲撃する「テロ実行戦闘員」なのである。

 今回の一連のテロ事件、そして近年おきたイスラム過激派事件4において、イスラム過激派グループは、フランスそしてベルギーやドイツ、英国などが社会的問題を抱えている事実をうまく利用し、人生の目的を探す若者たちに「サラフィスト・ジハードコンセプトを植え付け、テロ実行要員に育て上げた」と言える。

 また、シャルリ・エブド襲撃事件においては、「共和制の基本的価値観である”表現の自由”を代表するメディアを襲撃した」として、フランスにとっては、政治的、そして精神的にも大きな衝撃となった。1月7日から9日の3日間はフランス全体が恐怖に陥ったと言え、現在まで依然としてテロの可能性は高いままである。

1 AQAPも事件後に犯行声明を出している。

2 クアシ兄弟の兄、サイドは既に何度もイエメンに滞在していた。弟のシェリフは2010年10月に刑務所から出所した当時、国外渡航禁止になっていたのにもかかわらず、2011年7月、イエメンにいるサイドのところへオマーン経由で合流している。ここで2人は2週間ほどの軍事訓練を受けたという。

3 西洋文化・西洋イデオロギーを指す。今回のテロ事件においては、デモクラシーの根幹である“表現の自由”を象徴する「メディア」、主権国家の 象徴である「治安機関(軍・警察)」、そして「ユダヤ教」の人々。

4 2012年のモハメッド・メラ事件や2014年のメディ・ネムシュ事件