工業社会では、それで理にかなっていたところもあるんですね。なぜなら、頑張ることと仕事の成果がおおむねリンクしていましたからです。頑張って長時間働いたら、それだけアウトプットが出て成果があがるという時代でした。

 また、日本特有のオフィスの環境もあると思います みんなが大部屋で顔を突き合わせて仕事をしていたら、どうしても目に見える頑張りを評価したくなるものです。

上司ががむしゃらに頑張ってはいけない

──では、いま求められているのはどういう社員ですか。

太田 「自分なりに工夫して、最終的にきちんと成果を出す人」ということに尽きると思います。やりかたは本人に任せてかまいません。大事なのは成果をあげることであって、頑張ること自体には価値がないのです。

──自分がマネジャーになったとき、部下を頑張らせないためにはどうすればいいでしょうか。

太田 まず上司自身ががむしゃらに頑張らないということだと思います。自分自身が要領よく仕事をこなしていく。それが1つのロールモデルになります。

 それと、頑張りそのものを評価しないことですね。がむしゃらには頑張らないけれどもきちんと仕事ができる、成果をあげている。そういう社員を評価してあげるべきでしょう。

 特に知的な仕事では努力や頑張りは外から見えません。いま、どんな思考をしているのか、どこまで煮詰まっているのかなどということは本人にしか分かりませんよね。逆に、外から見て頑張っているようでも頭のなかは妄想にふけっているのかもしれない。その意味で、頑張りそのものを評価するのは難しくなってきています。

──目に見える努力というのはあまり評価するべきではない。

太田 成果そのものはもちろんですが、成果につながるようなプロセスで進行しているか、成果につながるような努力が行われているか、というところを見るべきでしょう。仕事には、成果につながるポイント、ポイントがあるはずです。そこをチェックするべきだと思います。あわせて、一人ひとり仕事の分担をきちんと決めることも必要でしょう。