中小企業にとって社員の能力とやる気をいかに高めるかは最も重要で切実な問題である。
中小企業は大企業とは違って人材を選り取り見取りで選べるわけではない。縁あって入社してきた社員を手塩をかけて育て上げ、戦力化していかなければならない。
その際は、スキル面はもちろんメンタル面の教育がとても重要となる。つまり働くことに喜びと誇りを持ってもらい、モチベーションを高めてもらうための教育だ。中小企業の経営者は日夜その方法に頭を悩まし、試行錯誤を重ねている。
藤原電子工業(大阪府八尾市)の社長、藤原義春さんもそんな1人である。藤原電子工業は電子部品用プリント基板のプレス加工を営む町工場だ。現在の社員数は約30名。
1993年、藤原さんがそれまで勤めていたプレス工場から独立し、創業した。創業から約10年はこれと言った技術がなく苦しい経営が続いたが、「SAF工法」という独自のプレス加工法を開発してから軌道に乗り始めた。
SAF工法は金型の形状を工夫することで、型抜きしたプリント基板からバリと埃を出さなくする工法である。不良率の低下、生産効率向上などの大きな効果があり、同社はこの工法を用いて様々な電子機器の基板加工を行っている。特に自動車の盗難防止用電子キーの基板加工は、同社のほぼ独占状態になっているという。
藤原電子工業は技術力のみならず、社員教育に熱心な会社だとの評判も高い。例えば同社では月に1度、藤原さんと社員が社内勉強会を開いて顔を突き合わせ、より良い会社づくりや社員の成長をテーマに議論している。また、社員全員が毎日その日の働き方や仕事の内容についてリポートを提出し、グループリーダーからコメントをもらって自分の成長に生かすという取り組みも行っている。
以下では、同社のこれまでの社員教育の取り組みについて藤原さんに語ってもらった。社員を育てる方法に絶対的な正解はない。同社ではいまなお理想的な社員教育を目指してチャレンジの真っ最中である。なにわの町工場の等身大の人づくり奮闘記をお読みいただきたい。
励まし、褒め続けたら生まれ変わった
──いままでどんな社員教育を行ってきましたか。