一方で、水野氏は「食糧危機を救う代替食材となり得るか、という文脈で昆虫食が注目を集めていますが、そもそも昆虫は、いまの食べ物の替りではなく、れっきとし“食べもの”です。食糧難がきたらしかたなしに食べる悪食(あくじき)と捉えられているのは残念で、食文化としても伝えていきたいのです」と話す。

昆虫を用いた料理。上は豆腐にカマキリとカイコの蛹をトッピングしたもの、下はハチおよびハチノコの串焼き
(写真提供:昆虫料理研究家の内山昭一氏)

「プチジビエ」で昆虫食を体験する

 水野氏が副理事を務める食用昆虫科学研究会では、昆虫食に関する調査・研究や、昆虫食のサイエンスコミュニケーションを通じて、様々な普及活動を行っている。なかでも人気を集めているのが「プチジビエ」としての昆虫食の推進だ。

「プチジビエ」とは、セミやバッタといった昆虫を野外で採取して、調理し、食べる営みを表す造語だ。狩猟により食用に得た野生鳥獣を意味するフランス語の「ジビエ」に由来する。