以前、 本コラム「両立は困難、習近平はなぜ2つの改革に挑むのか」で、習近平の軍に対する「反腐敗」キャンペーンと軍の近代化を目指す改革を同時に進めるのは無理があることを指摘した。軍を改革するのならば、腐敗分子を一掃してから取りかかるのが順序だと考えたからである。

 しかし実態は、反腐敗も軍事改革も同時並行で進める構えを崩していない。そこから導かれる考え方としては、習近平による「軍権」掌握のプロセスを進めることこそが真の目的であり、2014年6月末の徐才厚「落馬」(汚職容疑で党籍を剥奪され逮捕された)以後の人民解放軍における一連の人事は、反腐敗と軍の改革に名を借りた「習近平の軍隊」化であると言える。

習近平の命令に忠実であることを要求

 2014年9月21日、北京で全軍参謀長会議が開催され、そこに出席した習近平主席は次のことを強調した。

 「国家安全保障における新たな情勢および軍事闘争準備における新たな要求を前に、党の指揮に従い、計略に長け戦争する(善謀打仗)新型司令機関の建設に努め、軍事工作の創新発展を推進し、部隊が情報化された局地戦争に勝利するよう組織し指揮する能力を絶えず強化しなければならない」

 ここで言及された「新型司令機関」が何を意味するのか、2013年の「党18期3中全会」(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)で提起されていた軍事改革とどう関係してくるのか、その後の報道を待ったが新たな情報は出てこなかった。

 そうしたところ、2014年12月25日、中央軍事委員会が習近平主席の批准を経て「党の指揮によく従い、計略に長け戦争する新型司令機関の建設に努力することに関する意見」を発出した。